こんばんは、麻乃ヨルダです。本日はYoutubeでフルで見られるサッカーの試合をお届けしていきます。
サッカーファンにとっての長年の悩みの一つ、それは過去の試合のアーカイブが気軽に見られないこと。有料チャンネルでは主にその年の試合と去年の試合をアーカイブで残しておいてくれたりしますが、それより前の試合のアーカイブは消されたりして、過去の試合ほど遡ることが難しくなります。再放送されるのは一握りの名勝負だけ。
ハイライト動画ならまだしもフルマッチの古い動画は胡散臭い違法アップロードくらいでしか見られず、公式でいつでもフルマッチの動画を見られるという環境がありませんでした。しかし、近年そんな状況を変化させる出来事がありました。コロナショックです。
コロナ禍で自宅生活の世の中になると、各業界が外出せずに動画や配信などでコンテンツを楽しめる施策を打つようになりました。サッカー界も例外ではなく、この時期からYoutubeで各サッカー協会やクラブが過去の試合のフルマッチ動画をアップするように。
サッカー日本代表の試合がアウェー戦のみ有料チャンネル限定に移行したり、欧州チャンピオンズリーグ決勝が地上波で放送されなくなったり、我が国ではむしろオープンにサッカーに触れられる機会が減ってしまっているこの頃。ちょっとでもサッカーの布教に貢献すべく(あと違法視聴を駆逐すべく)、「Youtubeでも試合見られるんだぜ!」という記事を書くことにしました。
今日お届けする試合はFIFAConcacaf公式チャンネルがアップしている「2025 Concacafチャンピオンズカップ 準々決勝 2nd Leg インテル・マイアミ対ロサンゼルスFC」です。
スペインで輝くTAKE・KUBO
今回は日本人選手が活躍する試合の紹介です。スペインサッカー、リーガ・エスパニョーラに所属するレアル・ソシエダとグラナダの対戦で、レアル・ソシエダに日本人の久保建英選手が所属しています。
久保選手は非常に若い内から注目されていた選手で、小学生の時にFCバルセロナの下部組織(カンテラ)に引き抜かれ、そこで「神童」として輝きを放っていました。そのままバルサで成長をして、ゆくゆくはトップチームで活躍をと期待される存在でした。
しかし、世界中から子供をスカウトして育てるバルサのやり方がルールに反しているとFIFAから制裁を受け、その影響で久保選手はカンテラの試合に出られなくなりました。これにより、久保選手は日本への帰国を選択します。
日本に帰ると幼少期を過ごした川崎フロンターレではなくFC東京の下部組織に入団し、そこで中学生ながらU-18のチームに飛び級して活躍するなど、「久保くんっていう凄いやつが居るらしいぞ」というスペイン時代の評判通りの怪物ぶりをアピールします。
そしてトップチームに昇格し、横浜・F・マリノスへのレンタル移籍なども経ながらJリーグでプレーし、「久保くん」という都市伝説めいた存在のベールが明かされます。バルサで期待される日本人というのは当時あり得ないと思われた存在で、そんなリアルキャプテン翼のような選手が本当に居るのか、居たとして早熟なだけでなくちゃんとプロとして通用するのか半信半疑だったんですね。
U-20ワールドカップにも日本代表として飛び級で参戦し、所属するFC東京はリーグ首位を走っている最中。このまま日本でキャリアを進めるかと思われた矢先、レアル・マドリードへの移籍が発表されます。久保選手はバルサを追われた後もスペインでキャリアを積むことを諦めていなかったんですね。しかし、一時はバルセロナで期待されていた選手がレアル・マドリードに移籍したことは少々物議を醸しました。
世界最高のクラブ、レアル・マドリードに移籍したものの当然すぐにトップチームでは出られないので、ここからレンタル移籍を繰り返すことになります。ローン先で武者修行をして、力をつけたらトップチームで、というのがカンテラ所属選手の理想の流れですが、バルサを追い出されてから上手く軌道修正できていた久保選手のキャリアにここから暗雲が立ち込めます。
サッカーの世界にはレンタル(ローン)移籍というシステムがあり、契約している所属元のチームから別のチームに短期間移籍することができます。所属元のクラブは「試合に出ない選手を手元に置いておいても仕方がないから別のチームで試合に出させられる」、受け入れ先のクラブは「すぐには買い取れない選手を借りれる」ということで、買い取りではない移籍が認められています。特に強豪チームの若手選手は「育てたいけど戦力としてはまだ計算できない」とレンタルに出されることが多いです。
みんなが得をするシステムに思えますが、実際はそう上手くは行きません。なにせ、引き取る側はレンタルした選手が育ったところでいずれは所属元に帰ってしまうので、とにかく即戦力として使えるかどうかを見ています。なので、結果がついてこなくても我慢してレンタル選手を起用するなんてことは無く、結果が出なければすぐに試合に出られなくなります。
レンタル選手はゴールやアシストといった数字が全て。目に見える結果が求められる環境で久保選手は目の前の結果を導くためのプレーに拘泥します。元々、バルサ育ちらしく技術やプレービジョンでゲームを作りながら戦っていく選手でしたが、数字に拘った結果強引な勝負を仕掛けるプレーが増え、ドリブラーとしては成長しつつも本来の良さが消えて迷走し始めました。
そのため、レンタルを繰り返すほど所属元でのトップチームデビューが遠のく、若手にありがちな悪循環にハマりつつありました。あの久保建英ですら失敗パターンに乗ってしまうのか──そう思われつつあった時、声を掛けたのがレアル・ソシエダ。ソシエダは完全移籍で久保選手を獲得し、目の前の結果に焦る必要が無くなった久保選手は、ここから急激に成長します。
偉大な先輩ダビド・シルバとの出会いもあり、元々持っていた視野の広さ、レンタル先で得た仕掛ける力、新たに得たフィニッシュワークが融合し、すぐにソシエダの絶対的な主力に定着。リーガ・エスパニョーラでもトップレベルのアタッカーとして認知され、世界に誇る「TAKE・KUBO」が帰ってきました。
今回紹介している試合はそんな久保選手のソシエダでの2シーズン目序盤の試合。1シーズン目でチームの年間最優秀選手に選ばれ、その活躍が偶然でなかったと示せるかどうかが試される2シーズン目。ソシエダはそれまでのリーグ戦3試合で勝ちがありませんでしたが、久保選手個人は3試合連続でマン・オブ・ザ・マッチのスタートダッシュに成功。
そしてサムネでネタバレされているようにグラナダとのリーグ4試合目でソシエダはシーズン初勝利を掴むわけですが、この試合で久保選手はどんな活躍を見せてくれたのでしょうか。
ネタバレあり!試合の感想
両チームのスターティングメンバーは動画で紹介されている通り。ただ並びは違って、グラナダの方は4−4−2ではなく5-2-3で後ろを5枚にしてました。カジェホンが右ウイングバックでウズニが右シャドーでしたね。
試合の入りはホームのソシエダがボールを持つ展開。グラナダは5バックで引いてサイドと裏のスペースを消しつつ、アンカーのスビメンディをボジェかピボーテのどちらかで見てソシエダの攻撃を止める作戦。
しかし序盤に試合が動きます。グラナダがボールを奪って速攻に入ろうとしたところでスビメンディが引っ掛け、こぼれたボールを偽9番のオヤルサバルが落とすと、ブライス・メンデスがすかさずライン裏へ蹴り込みます。ラインが崩れていたところを見逃さずランニングしていた久保にボールが入り、後ろから迫るディフェンスに身体を当てさせないコース取りでカットインすると、そのままキーパーとの1対1を制してゴール。開始9分でソシエダが先制します。
引いて守る作戦のはずが序盤で失点してしまったことでプランが崩れ、前から行くしかなくなったグラナダ。ソシエダは圧をかけてくるグラナダに対して落ち着いてボールを回し、その後もゴールに迫っていきます。
雨が強くなるレアレ・アレーナでの試合はここから膠着していき、お互いにゴール前までは迫るものの決定機にはたどり着かず。試合のテンションが落ち着いていく前半の半ば、グラナダのコーナーキックが2本続くと、グンバウの蹴ったボールはボジェをマークしていたル・ノルマンの足に当たりオウンゴール。同点となります。
試合を振り出しに戻されますがソシエダは慌てずにペースを維持。すると前半の終盤、グラナダの速攻をいなしてレミーロがメリーノに縦パスを送ると、その落としをもらったスビメンディが一気に前進。カウンター返しの局面となり、スビメンディのタッチが大きくなったところをディアスが触りますが、ボールはトラオレの元に。
トラオレはすぐに前の久保にパスを出すとランニングで敵のマーカーを引き連れ、そこで空いたスペースにカットインした久保が得意のエリアからシュート。シュートはブロックしたネバの足に当たってドライブ回転が掛かり、ゴールに吸い込まれていきます。これで久保はリーガ・エスパニョーラで初めての1試合2得点、乾貴士が持っていたリーガ・エスパニョーラでの日本人最多ゴール記録を更新しました。
後半、グラナダはブライアン・サラゴサとウズニのサイドを交換。鋭い速攻とロングボールでグラナダが攻勢を仕掛けます。10分ほど落ち着かないゲーム展開が続いた後、グラナダのセットプレーを凌いだソシエダが1分半に渡ってボールを握り攻め続けます。
そして久保が入れたクロスを相手が弾き、こぼれを拾ったトラオレがチャンネルに走る久保にすぐ渡すと、久保はブライス・メンデスにマイナスのパスを渡し、ブライス・メンデスもボールを下げると、そこに居たのはスビメンディ。シュートブロックの外から巻く美しいシュートが突き刺さり、ソシエダに3点目のゴールが生まれます。
これで余裕が生まれたソシエダは試合をコントロールしていき、約10分後に右サイドからスローインを得ると、逆サイドのバレネチェアまでボールが渡ります。フリーでパスを貰ったスビメンディは狙いすました縦パスをオヤルサバルに送り、オヤルサバルは芸術的なフリックでライン裏に走り込むバレネチェアにラストパス。バレネチェアが流し込んで決定的な3点リードとなりました。本当に美しいゴールです。
更に75分、ゴールキックからのビルドアップでグラナダのハイプレスにやられ、再び左サイドにポジションを移していたブライアン・サラゴサに危険なシュートを撃たれますが、レミーロが防いで二次攻撃も跳ね返すとカウンター開始。ブライス・メンデス、久保、トラオレと繋いでトラオレがクロスを送ると、跳ね返りがPA内の久保に。久保はフリーで待つオヤルサバルにクロスを送ろうとするとこれがミキの足に当たりオウンゴール。まさかの5点目が入ります。
試合は完全に決しましたが、グラナダの選手たちは戦い続けます。82分にカウンターのチャンスが来ると、プエルタスがスビメンディを抑えながら前進し続けると、パスを受けたボジェもル・ノルマンとスビメンディに挟まれながら突破。股抜きシュートで1点を返します。
試合も終わりが近づき、オープンな展開からソシエダは決定的な速攻を繰り返し、サディクとショが決定機をフイにし続けると、98分にグラナダが追加点。縦パスを刈り取ったビジャールが前線の動きを冷静に見て浮き球のスルーパスを送り、そこに走り込んでいたブライアン・サラゴサがレミーロとの1対1を制してゴールを決めてみせます。試合はこれで終了し、計8ゴールが生まれた打ち合いをソシエダが制しました。
いやー、久保選手は凄かったですね。2ゴールに1オウンゴール誘発でほぼハットトリックを決めた数字の残し方も素晴らしいですが、ゴール以外の部分でも無双してました。ドリブルの迫力、パスの精度、プレー選択の正確さなど、久保選手のボールタッチ全てが効果的。完全に中心選手の風格でしたね。久保選手のソシエダでのプレーぶりを知るなら最適の試合です。
スビメンディの上手さやこのシーズンに移籍してきてすぐに久保選手と良好な関係を築いているトラオレなど、ソシエダ全体のプレーぶりも良かったです。レアレ・アレーナの雰囲気も最高で、ハチャメチャに点が入るところも含めてエンタメ性抜群でしたね。
もうちょっと試合が拮抗していればより最高でしたが、すぐに先制点が入ってしまったのがグラナダには痛かったですね。イーブンの状況で耐えてチャンスを探していく戦い方だったのに、試合の殆どをソシエダにリードされた状態で過ごしたので完全にペースが乱れました。それも前半の久保選手の2ゴールによるものだったので、久保選手が破壊した試合と言っていいでしょう。
グラナダ側の話だと、ブライアン・サラゴサって良い選手だなーと思ったら今バイエルン所属なんですね。レンタルで出されてはいますけどそれくらい注目のタレントということで、納得でございます。グラナダはこのシーズン最下位で降格してしまいますが、状態の悪いチームでも良い選手はちゃんと見る人が見ていますね。
Youtubeでフルマッチを見よう!
自分のYoutubeチャンネルで、今回紹介したようなフルマッチ動画をまとめたプレイリストを作っています。とりあえず良さげな試合のフルマッチ動画はプレイリストに入れておいて、見終わったらリストに残すか残さないか決めて試合を厳選していこうと思っています(なのでリストの内容は日々変わります!)。
リストに残す(ブログで記事を書く)基準は、「結果が分かっていても楽しめるくらい面白い試合」か「サッカーを語る上で知っておかなきゃいけないくらいの歴史的な試合」という感じです。Youtubeでいつでも何度でも見られるからこそ、他の動画や配信アーカイブと比べても特別な視聴体験が出来る試合を集めたいなと。約2時間、映画1本分の時間を使うわけですから、他のコンテンツではなくサッカーじゃないといけない理由を見出だせるような試合を選んで紹介していきたいですね。
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