こんばんは、麻乃ヨルダです。本日はバイスシティの没ネタを紹介していきます。
皆さんは「Gator keys」という地名を聞いたことがあるでしょうか？GTAの各シリーズをプレイしていた人でも、この地名は聞き覚えがないと思います。何故なら、GTAシリーズでは一度も出てきていない場所だからです。
では、何故シリーズで一度も出てきていない地名がGTAと関係するのか。それは、この「Gator keys」がVCの開発段階で没になった土地だからです。今回はこの謎の土地について、Vadim Mでもナレーターを努めていたBadger Goodgerさんの動画を見ながらチェックしていきましょう。
目次
ゲイターキーズってなんだ！？
ゲーム解析によって世界中のマニアたちがGTAシリーズを研究し、隠されていた没データも徹底的に掘られていきましたが、バイスシティの内部にあった未使用テキストでこの「Gator keys」に関する記述がありました。
未使用テキストでは、エイブリー・キャリントンがトミーに「ゲイター・キーズで取引をするんだが、自分は忙しくて取引には行けないから代理人を立てる。代理人が無事に取引に辿り着けるよう連れて行ってくれないか？」と依頼しています（代理人はドナルド・ラブかな？）。
しかし、ゲイター・キーズは製品版のマップには存在していません。ミッションも土地も没になったんだと思いますが、ゲイター・キーズとはどんな場所だったんでしょうか。
名前からすると、フロリダキーズがモデルであることは間違いないです。フロリダキーズはバイスシティのモデルであるマイアミ、フロリダ州にある細長い列島で、列島を長ーい一本の道路（オーバーシーズハイウェイ）が繋いでいるのが大きな特徴です。GTA6のトレーラーでもそれっぽい場所が描写されていましたね。
エイブリーはゲイターキーズで何をしようとしていたのか
ゲイターキーズという土地が構想されていたことと、その元ネタは分かりましたが、その内容がどういうものであるかは殆ど情報が残っていないのでほぼ全てが謎に包まれています。ただ、ゲーム内ラジオでエイブリーが自分の不動産を宣伝するコマーシャルに出ていたので、そこから内容を推測することは出来ます。
コマーシャルでは、「Shady Acresは信じられないほど高級で最先端の最高級コンドミニアムだ。街から車で少し離れたところにある手つかずの湿地帯にあるその場所では、都会の喧騒や招かれざる客から逃れて休暇を取ることができる」とエイブリーが話しています。
おっと、また知らない単語が出てきました。今度は「Shady Acres」なる名前が出てきました。皆さんも御存知の通り、この「Shady Acres」も製品版には存在しない場所です。しかしこちらは未使用テキストではなく、製品版に入っているラジオコマーシャルでしっかりと名前が出てきました。
同じエイブリーが喋っている2つのボツ要素、これが無関係だとは考えにくいので、「Gator keysにShady Acresというコンドミニアムがある（あるいはこれから建てる）」「Shady Acresに関する取引のためにGator keysに用事があった」という推測が立てられます。
ゲイターキーズがどうなっていたか
では、ゲイターキーズが実装されていたらどうだったかを想像してみましょう。元ネタのフロリダキーズ諸島は自然の多い観光地で、ビーチや公園、小さい都市や居住区がある島々をオーバーシーズハイウェイで渡って楽しんでいく場所になっています。
そういった要素の全てをバイスシティに詰め込もうと思うともう一つの島を作るくらいの労力が必要になってしまうので、構想段階であってもエイブリーが言っていたように「手つかずの湿地帯」くらいの、ほぼほぼ自然しかない小さな島の数々を想定していたのではないでしょうか。最終的に、それすらもカットされてしまったわけですが。
そして場所についてですが、フロリダキーズがフロリダの南にあることを考えるとゲイターキーズも恐らくバイスシティの南側に作られる予定だったのではないでしょうか。
考察の材料として、動画の4:07~で見られるゲーム発売前にロックスターが公開したスクリーンショットがあります。左下のレーダーをよく見ると、水上に掛かる3つの長い橋の上にトミーが居ることが分かります。
角度や水上というロケーションなどを考えても、オーバーシーズハイウェイの一部であるセブンマイルブリッジ周辺が元ネタの可能性があります。うっすらと浮かぶ緑のアイコンが北西にあり、そのアイコンがバイスシティ本土にあるものと考えると、この道路は本土の南にありそうです。
本土の南にゲイターキーズがあったとして、島のどこからオーバーシーズハイウェイらしきものが繋がっていたのでしょうか。妄想ポイントとしては、空港の貨物ビル近くにある道。そのまま海の向こうに続いていきそうなところでブツっと道が切れているんですよね。この途切れた道のマップ上の角度がスクショの道の角度とバッチリ合うというのもあり、空港付近から南に道を伸ばす計画があった可能性はあります。妄想は止まらない！
モデルになっていたのはフロリダキーズだけでなく……？
が、Badger Goodgerさんの追加の動画によると、情報提供をしてくれたKalvin氏が「レーダーに映る道はバイスビーチにある道だった」と教えてくれました。開発段階でマップの表示が完全でなかっただけで、本土にそのまんまの形の道があったと。
これで水上にある道という説は覆されてしまいました。製品版の先入観があるので、レーダーの表示の仕方で水上ではないかと思ってしまったわけですが、情報と見方一つで見えるものが全く変わってしまうというのがよく分かります笑。我々は自分が持っている少ない情報からいくらでも物語を妄想してしまいますからね！
Kalvin氏はそれだけでなく新たな情報を提供してくれました。ゲーム内に気になるLODテクスチャを発見したというのです。LODテクスチャとは、カメラからの距離に応じて解像度が変わるテクスチャ（3Dオブジェクトの表面に貼り付ける画像）のことです。近くで見ると高解像度で、遠くから見ると低解像度で、描写負荷を軽減するというのは3Dゲームだと基本技術ですよね。
そのテクスチャは緑の草木のような画像で、「LODeverglades2」と名前が付けられていました。恐らく名前の元となっているエバーグレーズはフロリダ州にある広大な湿地です。南部にある国立公園は世界遺産に認定されており、巨大で自然の多いアメリカの中でも最も原始的な荒野で、最も多様な生態系が見られる場所だと言われています。
ロックスターゲームスのアートディレクターを努めていたアーロン・ガーベッド氏は、2012年に行われたバイスシティ発売10周年のインタビューで、「当時を振り返ってみて、製品版から何か変えたいことや、やりたかったことはありますか？」という質問に対し、「あの時はエバーグレーズを作りたいという話をしていて、ラフスケッチも書いたと思います。街から周辺に自然区域を拡張できたら最高だったでしょう」と答えています。
ということで、エバーグレーズをマップに追加する計画があったと判明しました。エイブリーの没台詞で「湿地帯」という単語が出ていたことを考えると、これはゲイターキーズのことを言っていると見て間違いないでしょう。ゲイターキーズはフロリダキーズだけでなくエバーグレーズも元ネタとした自然区域だったみたいですね。
では、ゲイターキーズと呼ばれる存在がより確かなものになってきたところで、ゲイターキーズをどこに作るつもりだったのかという話に戻りましょう。そこでまたヒントになってくれるのが先程のLODテクスチャ。実はこの「LODeverglades2」、未使用ではなくマップに使われています。
その使われている場所というのが、空港の滑走路、その西側の端の一部分になります。海に面して壁になっている場所の一部が、距離を調整すると解像度が変わってこのテクスチャが見えるようになります。
ベータ版のマップを見てもらっても分かるように、空港周辺は開発段階で色々と修正された場所です。空港自体、ゲーム中では使われないエリア（VCで使える飛行機は水上機のSkimmerだけで、Skimmerは陸の滑走路では離陸できないのだ）なので、この一帯を有効活用したいというアイディアは練られていたと思います。エイブリーのセリフでも「街から車で少し離れたところにある手つかずの湿地帯」と言われていましたし、湿地帯を市街地から最も遠ざけられる立地は空港の方になりますからね。
面白くてもボツはボツ
さて、没データの妄想は楽しいですが、「どうして没になってしまったのか」も没データを考える上で外せません。我々外から見ているファンは無邪気に「こんな面白そうなのになんでボツにしちゃったの〜？」と言えますが、そんなことはボツにした開発者たちも思っているわけで、ボツにせざるを得なかった理由がどこかにあります。
前述したように、単純に労力がかかるというのはあるでしょう。フロリダキーズを再現するために長い長い道路を通して、そこからあちこち降りられる島を作って、島それぞれに特色のあるエリアを作ってとなると、それ自体がゲームの舞台として成立してしまいそうな規模になります。
かといって小規模でフロリダキーズを再現するとなったらロクに車も通れないよく分からないものにしかならなそうですし、悲しいことにトミーは泳げないので、カナヅチの主人公を操って海の上の小さい島々を巡るのは結構苦労しそうです。特にトミーは歴代シリーズの中でも最強の俊足なので、あの世界レベルな足の速さで島の中を走ったらすぐに海にドボンする光景が目に浮かびます笑。
エバーグレーズにしても、湿地帯を海上にどのようにして作るのかが問題です。やはりそれなりの大きさの島を作ってその一部分を湿地帯にして、居住区にShady Acresを、となると思いますが、もう一個スターフィッシュ島と同じくらいかそれ以上の島を作るのはかなり苦労しそうです。
そして、ゲイターキーズどうこうよりも憶測を呼ぶのがエイブリー・キャリントン役のバート・レイノルズとの確執。エイブリーの声の収録中、バート・レイノルズの態度が最悪で制作陣と口論になったというのはよく知られている話です。
（そんなバート・レイノルズが演じるエイブリー・キャリントンは、後にリバティーシティ・ストーリーズで一言も喋らないまま、弟子であるドナルド・ラブからの依頼でトニーが始末することになるんですが、確執のことを知っているとなんともまぁ……）
エイブリーというキャラそのものをカットすることも考えられた中で、エイブリーはそのまま出演することになりましたが、もしかすると口論などもあり収録を途中で打ち切った、収録できている分だけでストーリーを再構築した、なども考えられます。その煽りを受けてゲイターキーズも使えなくなった、という可能性もちょっとはあるのかも。
そんな感じで、夢はいっぱいでしたがあの時のロックスターには実現ができなかったゲイターキーズ諸島。そんなロマンに溢れる謎の場所がバイスシティに隠されていた、というお話でした。
前述の通りGTA6のトレーラーではフロリダキーズ（オーバーシーズハイウェイ）らしきものが映っているので、過去のアイディアをできるだけ再利用するロックスターであれば、今度こそゲイターキーズの実現をしてくれることでしょう。
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