自分が見た中で「これは面白い!」と感じた動画(YouTubeでもニコニコでも)を紹介するコーナーです。今回は「地下鉄サリン事件 警察無線を地図で再現」です。
歴史的なテロ
1995年の3月20日。日本の首都東京で世界でも類を見ない凄惨な化学テロ事件が発生しました。数々の凶悪事件で容疑をかけられ、警察の捜査が進み焦っていた宗教団体「オウム真理教」が、最後の賭けとして起こした事件です。
事件の概要は、3月20日の午前8時ごろに東京都内で運転中だった複数の地下鉄車内で化学兵器サリンが散布され、乗客・乗務員など大量の人々が死傷した、というもの。平時の大都市で化学兵器によるテロ行為が行われるというのは世界でも初の事例で、しかも午前8時という通勤ラッシュの時間帯が狙われたため東京は大パニックに。
散布された毒物がサリンだと特定するのにも時間が掛かり(当時の化学機動中隊が使っていたガス分析装置にはサリンのデータが入っていなかったので特定しきれなかったらしい)、万全の対策ができなかった各救助隊が二次被害を被ったこともあり、死傷者は最終的に約6300人に膨れ上がってしまいました。現在に至るまでここまで大規模な化学テロ事件は無く、「サリン」の名前を世に広めた一件となりました。
この事件が起きた当時、自分はまだ産まれてから1歳にも満たない赤ん坊でした。なので、成長してからこの事件を知り、興味を持って当時のことを色々調べたりすることもありました。歴史的な大事件ということで様々な媒体で特集が組まれ、紙でも電子でも資料が沢山残っていたので色々と見漁ったりしたのですが、やはり「事件当時の空気感」をそのまま知るということは難しく、後から知識を得て事件の概要を知ってもそれはあくまで「想像の中の事件」でした。
しかし、先日見た上の動画で事件当時のリアルを知ることができ、大変勉強になりました。
テロ事件発生から1時間のリアル
ここで上の動画の概要について説明します。2015年、地下鉄サリン事件の発生から20年が経ったこの年に、警視庁は「当時の現場での警察官の活動を理解してもらうため」という理由で当時の警察無線のやり取りが記録されたテープを公開しました。これにより、事件発生から73分間に渡って警察がどのように情報を処理しながら動いていたかが分かるようになりました。
そして、「地形図やイラストを使って歴史や科学を楽しく理解する」がコンセプトのYouTubeチャンネル、「日曜アカデミー」さんがこのテープの内容をベースに、地図を使って各警官がどの場所でやり取りをしながら動いていたかを分かりやすく整理したのがこの動画となっています。
地図を用いて状況整理をしてくれたおかげで、会話を聞いているだけだと理解しきれない情報がすんなりと入ってくるのでとても聞きやすく見やすい動画になっています。東京の地理を理解していないと頭の中で「えーとどこがどこで……」と考えてしまいますが、そういったストレスもなく見られますね。
そして、各所の連携が分かりやすく図解されると、警察の指揮系統が如何に優秀かが本当によく分かります。上でも書いたように、地下鉄サリン事件は大都市で行われた初の化学テロ事件で、現場は大混乱に陥っても仕方ない状況なのに、錯綜する情報を淡々と処理して事件の概要を即座に掴み取っていく警察の動きは「すごい」の一言。テロ事件の想定、原因と思われる物の推定が分単位で行われていくスピード感に驚きます。
しかしこの動画の緊張感は凄まじいですね。音声だけの無機質さ、時折聞こえてくる一般人の悲鳴がそこにある恐ろしい現場を物語っています。何の演出もないそのままの音声がどんな資料よりも雄弁にあの時の現実を教えてくれますね。事件発生からの1時間、警察がどのように動いていたのかを知るのにこれ以上良い資料はないでしょう。本当に凄い音声とよく出来た動画です。
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