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GTAで見る「ベル 206(マベリック)」と「ヒューズ OH-6(バザード)」の関係性

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こんばんは、麻乃ヨルダです。僕がこのブログをやっている理由の1つに、「ゲームを通じて現実世界の解像度を上げたい(そしてその解像度をみんなとシェアしたい)」というものがあります。GTAなら、車の元ネタを調べることでゲーム内の車の見え方が変わるし、現実世界でモデルの車を見た時もより深く中身や背景が見えるようになって、知識が無い時は何とも思わなかったようなことが楽しめるようになります。

今回は「GTAで見る」と題して、GTAに出てきたモノの元ネタを調べ、知識をつけることによって、今まで無関係に見えていたもの同士を繋げて楽しめるようになろうという回になります。本日のテーマは「マベリックとバザード」



陸軍採用を巡るコンペ

マベリックバザードはGTAシリーズに登場するヘリコプターです。マベリックはPS2のバイスシティ時代から登場する古参ヘリで、バザードはGTA4から登場のヘリです。どちらも高性能で使いやすいヘリで、シリーズを通してこの2機を使って空の旅を楽しんだプレイヤーは多いでしょう。

GTA5で言うと、オフラインならサンアンドレアスのどこでも拾えるマベリック(本当はパラシューティング用だけど)と、オンラインならCEOになっていつでも呼び出せるバザードで、どちらも超便利ヘリコプターとして大活躍。広大なサンアンドレアス州を楽に移動するため、過労レベルで働かされるヘリでしょう。

オフラインとオンライン、別々の時間軸でGTA5を代表するヘリとして活躍するこの2機。実は元ネタで見るとライバル関係にあった2機です。マベリックの元ネタである「ベル 206」、バザードの元ネタである「ヒューズ OH-6」にはどんな因縁があるのでしょうか。

物語の始まりは1960年。1940年代にベル 47(GTAでのスパロー)がアメリカ陸軍に「H-13スー」の名で採用され、戦争の場で観測、偵察、医療搬送など幅広い任務に使用されました。

H-13スーの活躍を評価したアメリカ陸軍は、ヘリコプターの汎用性が今後更に重要となると見込み、新しい軽ヘリコプターの必要性を検討。そして1960年にアメリカ海軍は陸軍の委託を受け、軽観測ヘリコプター(LOH:Light Observation Helicopter)に関する提案依頼書(RFP)を25社の航空機メーカーに出し、回答を求めました。

その結果、12社がコンペへの参加を表明。最終的にベル・ヘリコプター、ヒラー・エアクラフト、ヒューズ・ツール航空機部門の3社が競争に生き残ります。

アメリカ陸軍は3社に試作機の開発を命じ、ベルはモデル「206」を開発。陸軍によって「YHO-4A」のコードネームを付けられテストが行われましたが、テストの結果、YHO-4Aは陸軍が求める性能を満たしていないとして不採用に。

ベルが脱落したことで、競争はヒラーの「OH-5A」ヒューズの「OH-6A」の一騎打ちとなりました。性能面ではどちらも陸軍の要求を満たしているため、残る問題はコスト。最初に陸軍が発注する714機に対して両機の価格設定がどうなるか聞かれ、ヒラーはOH-5A 1機あたり$29,415の価格を設定したのに対し、ヒューズはOH-6A 1機あたりわずか$19,860の価格を提示しました。

ヒューズが提示した価格はそのままだと赤字になる価格でしたが、一度契約を勝ち取って追加発注を得られれば、その時に価格を吊り上げるなどして最終的に元が取れるという判断だったのではないかと言われています。流石にこの価格差があっては勝負ありで、1965年5月26日、ヒューズに対してOH-6A 714機が発注されました。

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逆転のベル

「OH-6A カイユース」が陸軍との契約を勝ち取った一方で、206は受難の時を迎えていました。陸軍に採用されなかった206は民間用に売り出されたものの、売れ行きはイマイチ。顧客調査を行ってみると、大半のユーザーは「ボディー形状が良くない」と不満を持っていました。単純に美しくないというだけでなく、機体内のスペースが狭く、乗客は窮屈な座席に座らされ貨物も入らないと、外も中も問題だらけでした。

そんな声を聞いて、ベル社は胴体を大きく再設計し、流線型のボディーと前席2つ・後席3つの5シートを用意した「206A ジェットレンジャー」に作り変えて再び販売したところ、評価は一転し商業的成功を収めることになります。

206が傑作機に生まれ変わったのと時を同じくして、OH-6Aは窮地に立たされます。アメリカはベトナム戦争の真っ只中であり、ヒューズは目論見通り陸軍からの追加発注を得ることが出来ましたが、赤字覚悟の価格設定だったため作れば作るほど損失が膨らむ状態。このままではやっていけないので、ヒューズはOH-6Aの価格を一気に引き上げます。

OH-6Aの価格はいきなり約3倍にまで引き上げられ、更に生産も遅延。この事態にアメリカ合衆国議会はヒューズに警告を出し、アメリカ陸軍はヒューズが陸軍の調達規模に見合う生産能力を持っていないと判断。既に契約済みのOH-6A 1300機はそのままに、加えて必要な最大2700機の追加機体を新たに選定することにしました。

新たな競争入札に対し、ヒューズはOH-6Aを1機あたり$56,550で提案。ここでライバルとして登場するのが、先程コンペで敗れたベル。生まれ変わった206Aを1機あたり$54,200で作れると提案し、この競争入札で陸軍はベルと新たな契約を締結。 206Aは「OH-58 カイオワ」の名で採用され、リベンジに成功しました。

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キャラの違う傑作機

軍との契約を勝ち取るために戦った206とOH-6。どちらも素晴らしい機体として、官民で長年を活躍しました。

206Aは先進的なデザインが人気を呼び、建設や採掘の現場へ向かうビジネスマンの移動手段としても使用され、スタイリッシュなヘリコプターの象徴となりました。また、耐久性と低い運用コスト、軽量で起伏の多い遠隔地にも着陸可能な性能を備えていたため、報道機関や調査機関などが好んで運用し、今も世界中で愛されるヘリコプターとなっています。映画など映像作品でも数え切れないほど出演していますね。

206の改良は続けられ、より出力の高いエンジンに換装した206B ジェットレンジャー II、座席を7席に増やすため機体を延長した206L ロングレンジャー(マベリックに一番近いモデル)といった派生系がどんどん生み出されていきました。観音開きのダブルドアを持つ206Lは貨物の搬入が容易になり、担架ごと機内に収容できるということで「空の救急車」としても活躍しました。

戦場だと、ベトナム戦争でOH-58は観測ヘリコプターとしてだけでなく、輸送能力を評価され輸送ヘリコプターとしても運用されました。また、アメリカ陸軍は206の派生系である206B-3をヘリコプター訓練生向けのTH-67 クリークとして発注し、アメリカ海軍とアメリカ海兵隊もTH-57 シーレンジャーの名で採用。初期の206は「みにくいアヒルの子」扱いだったのが、206Aに進化してからアメリカだけでなく世界中で引っ張りだこの存在に。

OH-6はヒューズの売り方でゴタゴタしてしまったものの、性能はピカイチ。シンプルな設計で整備性が良く、コンパクトな機体は着陸地帯を選ばず運用が可能。軽いアルミニウム製の外皮は小火器の射撃によって容易に貫通されてしまうものの、墜落時には潰れてエネルギーを吸収し、頑丈な構造が主要システムと乗組員を保護することで、他の機体ではまず助からない墜落時での乗員生存率を引き上げました。

ベトナム戦争でOH-6は戦術兵器として活躍。他のヘリコプター(特にベル AH-1 コブラ 攻撃ヘリコプター)と組み、OH-6が低速低空で飛びながら地上を索敵。OH-6が攻撃を受けたら発煙弾で敵の場所をマークし、そこに味方のヘリが援護に来て地上を攻撃する「ハンターキラー」戦術が開発されました。これにより、反撃を恐れたベトナム兵は偵察するOH-6への攻撃を控えざるを得なくなりました。

(ただ、ソ連から供給されたSA-7グレイル肩撃ち式対空ミサイルが北ベトナム軍に導入されると、OH-6が一撃で撃墜されるようになってしまい、ヘリコプターを使った戦術の見直しに迫られました)

OH-6はモデル「500」の名で民間用にも製造され、改良を重ねて世界中に販売されました。輸送ヘリコプターとして活躍する206とは対照的に、プライベートヘリコプターとして航空観測、公共事業、法執行機関の業務など、乗客と操縦士が共に前席に座って飛行するタイプの仕事でよく使われます。



共に戦う同期

同じ目的のために生み出され、全く違う特徴を持って活躍した206とOH-6。そして、そんな2機をモデルにしたマベリックバザード。GTAの世界でも、2機は別々の役割で活躍していますね。

マベリックは派生系が多く、シリーズでは定番となっている警察仕様のポリス・マベリックを始めとして、報道機関仕様、ヘリツアー仕様と、様々な用途で活躍しています。GTAシリーズで一番多用途に使われているヘリでしょう。

バザードは派生バージョンは多くありません。しかし、通常版と武装仕様があり、武装仕様がとにかく便利で強力。軽やかに動き回り、機銃とミサイルで攻撃ができ、治安の悪いGTA世界ではとても頼りになるヘリです。勿論、敵も使ってくるので嫌な相手になることも。

マベリックもバザードも、モデル準拠ならGTA世界でも同じ目的で生み出されたはずの機体。とはいえ両者がゲーム中で直接のライバルになることはなく、それぞれ違う分野で活躍しているというのもリアルと同じ。職場が違うのでこの2機が一緒に並んだり、どっちを選ぼうか迷うことも殆ど無いでしょう。

ですが、両者にこんな開発秘話と関係性があると知ると、別物に見えた2機が繋がって見えるようになるんじゃないでしょうか。今日の空の旅はマベリックかバザードか、どっちをお供にします?

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