ずっとやりたいと思っていた、自分が見た中で「これは面白い!」と感じた作品をアニメ・映画・ドラマ問わず紹介するコーナーです。今回は「リベリオン (Equilibrium)」です。
失われた感情を取り戻せ!
文学、音楽、芸術など、感情を引き起こすものを禁じられた未来の世界。この法律を守るため、違反者を排除する特殊警察が配備されていたが…。クリスチャン・ベイル主演のハイテク・アクション・スリラー。
「リベリオン(原題:Equilibrium)」は、2002年公開の近未来SFガンアクション映画です。監督はカート・ウィマー、主演はクリスチャン・ベール。
第三次世界大戦後に出現した全体主義体制の都市国家、リブリア。そこでは党首ファーザー率いるテトラグラマトン党が独裁政党として君臨し、二度と戦争が起らないように争いの原因となる「感情」を持つことを禁じられた社会が形成されていました。
リブリアでは音楽や文学書籍、絵画や映像など、心を揺り動かす「感情的なコンテンツ」は全て「EC-10」と呼ばれ禁止され、人々は「イクイリブリウム」という政府機関が生産・配給する感情抑制薬である「プロジアム」の服用を義務付けられていました。党の方針に逆らい、薬の服用を拒んで「EC-10」を所有している人間は「感情違反者」として、「ガン=カタ」と呼ばれる戦闘術を極めた特殊捜査官「グラマトン・クラリック」が摘発・処刑します。
そのリブリアで第1級クラリックとして凄腕の捜査官をしていたジョン・プレストン(クリスチャン・ベール)。しかし、同僚のパートリッジが違反者だったことを知り、彼を射殺したところから彼の運命は動いていきます。
パートリッジを始末した夜、プレストンは違反者として妻が捕らえられ処刑された日のことを思い出します。信じられない出来事の中、その様子を冷静に見つめる息子の姿。妻が違反者だったことにも、息子が密告したかもしれないことにも、薬では抑えられないほどのショックを受けていました。
翌朝、いつもの時間に注射するはずのプロジアムのカプセルを誤って落としてしまったプレストン。本来ならイクイリブリウムに届け出を出して代わりの薬を貰ってこないといけないところですが、プレストンは思うところがあったのかそのことを隠して仕事に出かけます。
そして、その先で出会った違反者のメアリー・オブライエンを見て、妻のことを思い出してしまうプレストン。メアリーの家にはEC-10があり、それもまたプレストンの心を揺さぶります。果たして自分のしていることは正しいのか──プロジアム無しの生活を続け、違反者と関わっていくプレストンはこの世界で何を見つけるのか、というストーリーになっています。
こまけぇことふっ飛ばすカッコよさ!
今作は低予算映画で、時代を加味してもショボい映像処理、未来世界の割には古い車、兵士が隊服で至って普通なフルフェイスヘルメットを被っているなど、一見して低予算なのが伝わってくる作りになっています。分類としてはB級映画と言っても差し支えないでしょう。
世界観はステレオタイプなディストピアで、シナリオもベタ。今ではカルト的人気を誇る今作ですが、こうして要素を見てみると全然惹かれるものがありません。実際、今作は商業的に失敗し、評論家からの評価もイマイチでした(売れなかったのは広告費を掛けてなかったのもあるけど)。
では、なぜ今作に熱狂的なファンがついているのか。それは「ガン=カタ」があるからに尽きます。現代アクション映画につきものの銃撃戦ですが、どうしても絵面は画一的になりがち。そんなガンアクションを変える概念として、ウィマー監督は東洋武術の「型」を取り入れた動きを作り上げました。
「ガン・フー」とファンから呼ばれる銃を使ったカンフーのようなアクションは、男心をガツンと揺さぶるカッコよさ。この映画を見た男性の99%がプレストンの真似をしたことでしょう。当然僕も部屋で一人ガン=カタの修行をしました笑。
今では「ジョン・ウィック」を始めとした映画やゲームで定着したガン・フー。その始まりはジョン・ウー監督の「男たちの挽歌」で、それから「デスペラード」や「マトリックス」などで二丁拳銃アクションが真似され、リベリオンが新境地を開拓。
しかし、リベリオンが革新的すぎたのか、ジョン・ウィックシリーズが登場するまで10年以上代表的なガン・フー作品は現れませんでした。公開終了後、ソフト化されて「面白いガンアクション映画があるぞ」と口コミが広がり、それから長く唯一無二のガンアクション映画として人気を高めていったのです。
ガンアクション映画の特異点であるリベリオン。ジョン・ウィックシリーズなどが好きな人はきっと楽しめる作品だと思うので、己の厨二心に火を点けたい人は是非とも見てほしい作品です。
ネタバレあり感想!
Youtubeで無料公開されていたので久しぶりにこの作品を見ました。本当は作業中の流し見のつもりだったんですが、気づいたら見入ってしまいました笑。安っぽくてベタで笑ってしまうところもあるんですけど、細かい部分を吹き飛ばすだけの魅力がある作品ですね。
ガン=カタは今見ても最高でした。特に終盤の覚醒以降はそこだけ何度もループしてしまうくらい好き。ライバルキャラであるブラントを瞬殺するシーンが特に良いですね。良い勝負をするのかと思いきや、ブチギレたプレストンの前では相手にもならず。誰よりも真っ先に違反者かどうか調べられそうな感情剥き出しのニヤケ面がストンと下ろされちゃいました(コイツ全編通して感情ありすぎだろ!)。
真の黒幕であったデュポンが本人もゴリゴリの武闘派で、プレストンと互角の勝負をする熱い展開。この映画のクライマックスに相応しい戦いでした。強そうに見えない見た目と命乞いの情けなさ、そして戦闘力のギャップが魅力的なキャラクターです。このポジションでめっちゃ強いんかい!ってのが良いですよね。
ストーリー部分も改めて見返してみると王道なのがストレートに響いて良いなと思いました。特に自宅から日の出を見るシーンね。クリスチャン・ベールの演技力と演出の美しさはそれだけで見る価値があります。ガン=カタが魅力的でもストーリーや演出がごちゃついていたら、娯楽映画としてリベリオンをここまで楽しめなかったような気もします。感動、悲しみ、怒り……失われていた感情を爆発させ、最後は悪者を倒してニヤリ。ストレートだからこそガン=カタを迷いなく楽しませてくれます。
ディストピア世界とガン=カタ。冷静に考えると別に組み合わせる必要も無い2つの要素。ディストピア世界のドラマとガン・フーアクションにシナジーはあるのか?分かりません。分かりませんが、この2つが組み合わさっているからリベリオンは特別な作品なのです。支配された社会制度をガン=カタの強さだけでなんとかできたら気持ちいいだろ?それでいいのさ。
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