こんばんは、麻乃ヨルダです。本日はYoutubeでフルで見られるサッカーの試合をお届けしていきます。
サッカーファンにとっての長年の悩みの一つ、それは過去の試合のアーカイブが気軽に見られないこと。有料チャンネルでは主にその年の試合と去年の試合をアーカイブで残しておいてくれたりしますが、それより前の試合のアーカイブは消されたりして、過去の試合ほど遡ることが難しくなります。再放送されるのは一握りの名勝負だけ。
ハイライト動画ならまだしもフルマッチの古い動画は胡散臭い違法アップロードくらいでしか見られず、公式でいつでもフルマッチの動画を見られるという環境がありませんでした。しかし、近年そんな状況を変化させる出来事がありました。コロナショックです。
コロナ禍で自宅生活の世の中になると、各業界が外出せずに動画や配信などでコンテンツを楽しめる施策を打つようになりました。サッカー界も例外ではなく、この時期からYoutubeで各サッカー協会やクラブが過去の試合のフルマッチ動画をアップするように。
サッカー日本代表の試合がアウェー戦のみ有料チャンネル限定に移行したり、欧州チャンピオンズリーグ決勝が地上波で放送されなくなったり、我が国ではむしろオープンにサッカーに触れられる機会が減ってしまっているこの頃。ちょっとでもサッカーの布教に貢献すべく(あと違法視聴を駆逐すべく)、「Youtubeでも試合見られるんだぜ!」という記事を書くことにしました。
今日お届けする試合はFAカップ公式チャンネルがアップしている「2022-23 FAカップ4回戦 ブライトン対リヴァプール」です。
三苫のプレーを見よ!
今回の試合はエミレーツFAカップの1試合。FAカップことThe Football Association Cupはイングランドで行われるサッカーのカップ戦で、創設は1871年。フットボール発祥の地イングランドにおける、世界で最も歴史のあるサッカーの大会です。
各国のサッカー界では、強さが同じレベルのチームが集まって総当りをするリーグ戦、リーグに所属するチームがトーナメントで戦うリーグカップ戦、その国のサッカー協会に所属する全てのクラブが参加する国内カップ戦の3つの戦いを、1年の中で並行して行うのが一般的です(プラスで、前年の各国成績優秀クラブを同大陸で集めた大陸カップ戦)。
FAカップは国内カップ戦にあたる大会で、プロ・アマ関係なくFA(イングランドサッカー協会)に登録している全てのチームが参加できるカップ戦。その戦いを勝ち上がってきた、イングランド・プレミアリーグ(イングランドのプロリーグトップディヴィジョン)に所属する2チームの試合を見ていきましょう。
ホームのアメックス・スタジアムで敵を迎え撃つのはブライトン&ホーヴ・アルビオンFC。イースト・サセックス州にあるブライトンのこのクラブは、財政問題を抱えるなどして長らく低迷する時期があったものの、2010年代後半に入ってからイングランドのトップリーグであるプレミアリーグに昇格し、実力のある中位クラブとして注目の存在となっています。
日本でもこのクラブは知名度があり、その理由は日本代表の三笘薫選手が所属しているから。三笘選手はブライトンでレギュラーとして活躍を続けており、世界一のサッカーリーグと呼ばれるプレミアリーグのクラブで試合に出続けるだけでも凄いのに、その中で素晴らしいプレーを継続させてビッグクラブへの引き抜きも噂されている注目のタレントです。
ブライトンのホームに乗り込むのはリヴァプールFC。古くからイングランドで強豪として君臨し続けるチームで、一時は停滞し「古豪」と言われていたものの、長期戦略の見直しと経営状況の改善から近年では世界トップレベルのクラブとなるまで力を取り戻し、プレミアリーグでも毎年タイトル争いを演じています。
この試合は2022−2023シーズンのFAカップ4回戦の試合。リヴァプールは前年のFAカップ覇者でディフェンディングチャンピオンとして大会に望んでいます。しかし、前年はあと一歩のところでプレミアリーグとチャンピオンズリーグのタイトルを逃し、今季の始めはサディオ・マネや南野拓実選手など前線の駒が抜け、中々調子が上がらずチームのピークが過ぎ去ったような難しいシーズンを送っていました。
ブライトンの方はシーズンの初めにグラハム・ポッター監督からロベルト・デ・ゼルビ監督に交代し、好調にシーズンを進めていました。この試合の2週間前にはプレミアリーグで両者がぶつかっていて、その時はブライトンが3−0でリヴァプールに勝利。イケイケの中位クラブと、調子を崩したビッグクラブの対決ですね。
試合は非常に白熱した内容となりました。どちらのチームもアグレッシブなスタイルが持ち味なので、パワーとスピードで魅せるイングランドらしい戦いに。
ポッター監督の元で力を付け、デ・ゼルビ監督が更に成長させたブライトンは積極的にボールを回して相手を崩し、相手ボールになると積極的にプレスを掛けてボールを奪い返しに行くスタイル。対するリヴァプールはとにかく速い攻めと強烈なプレスを主体とするスタイルで、どちらもアグレッシブにボールを取りに行くので、プレスがハマれば速攻のチャンス、プレスを回避されると逆にピンチの、激しく攻守が入れ替わる好ゲームとなりました。
イングランドらしいエンタメ性抜群の試合で、三笘選手がどんなプレーを見せたのか。英国のフットボールと三笘選手を両方堪能できる試合を楽しみましょう。
ネタバレあり!試合の感想
アトレティコ・マドリードのファンである自分は基本的にスペインサッカーを追いかけているので、プレミアリーグは専門外。FAカップとカラバオカップのことはもっと分かりません。
しかしYoutubeを見てみるとFAカップのYoutubeチャンネルではかなり積極的にフルマッチ動画の投稿が行われていて、その年の試合を終わってすぐに配信してくれるスピード感で、このYoutubeの充実っぷりは世界中のサッカーコンテンツの中でも多分最強。なので、気になる試合を色々見てみることにしました。
その中で、自分も気になるし他の人にも見てもらいたいしなマッチングとなると、やはり今が旬のブライトンと三笘選手の試合でしょう。そして相手がリヴァプールで、サムネが三笘選手。こりゃあ面白そうじゃ!と思ってこの試合の視聴を始めました。
いやー、期待通りの試合でしたね。自分の中のイングランドサッカーのイメージですが、ボールホルダーに対して果敢にアクションをする文化なのでゲームの流れが速いですよね。欧州の大リーグだとスペイン・イタリアはまずスペースを消すところから入るのでこのスピード感は中々出ません。ドイツはイングランド寄りかな。
近年はプレミアリーグでもペップ・グアルディオラのマンチェスター・シティの影響からかリスクを避けたボールポゼッションをするチームが増えているという話もありますが、この2チームはそうではありませんね。攻守の局面で積極的に自分たちからアクションを仕掛けるので、常に動きがあって飽きさせません。
やっぱりエンタメ的には両者アグレッシブなサッカーを沢山見たいですし、こういうサッカーでないと中々他人に勧められません笑(アトレティコの試合はスタイル的に人に勧められない試合ばっかりだぜ!)。サッカーは1点の重みを楽しむミスのスポーツですが、両者がリスクを取らない鍔迫り合いみたいなゲームは思い入れのあるチームの試合じゃないと楽しむのは難しいです。
あと、そういう試合はリアルタイムで見るからヒリつくのであって、結果が分かっているアーカイブだとヒリつかなくて単に静かなだけのゲームに見えがちなので……この企画だとその手の試合はジダン頭突き事件みたいな内容以外で話題性のある試合しか取り上げないと思います。チームも選手も知らなくても面白い、みたいな試合を選んでいきたいです。
話を戻して、この試合が面白いと思って記事にしたポイントは三笘選手の活躍ぶり。ハイテンポなゲームの中で三笘選手がイキイキとプレーしていて、三笘選手のことを知っているけどしっかり試合を見たことがない人に間違いなく「三笘薫が活躍している試合」として勧められるなと。
対面のサイドバックが守備に難のあるアレクサンダー・アーノルドなのはあると思いますけど、この試合の三笘選手はかなりやりたい放題。ドリブルを仕掛けたら必ず一人(ほぼアーノルド)は抜く、キラーパスを出す、ゴール前に飛び込むで、ブライトンの攻撃を牽引し続けています。この試合での存在感はサラーと遜色ないですね(つまり、サラーもやりたい放題)。
試合開始3分でサラーが右サイドからシュートを放ち、こぼれ球を再びサラーが蹴り込むとダンクがなんとかゴールライン上でクリア。14分にはブライトンが速攻からソリー・マーチ(フルネームで言いたい)が抜け出し、マイナスのグラウンダークロスを入れるとファーガソンがシュート。これをアーノルドがライン上でクリアと、序盤から両チームが決定機を引き寄せます。
そして29分、クリアボールのこぼれをナビ・ケイタがボレーで前線に送りサラーが抜け出すと、丁寧なラストパスを出し、決めたのはエリオット。お互いに数秒あればゴールチャンスに持っていく激しいゲームで、リヴァプールが先手を取りました。
リヴァプールがリードを奪ったことでブライトンがボールを持つ展開が続くと38分、ショートコーナーからクロスを入れこぼれたボールを後ろから走り込んできたランプティが思い切りよくシュート。これがダンクの足に当たり軌道が変わったことで、アリソンの逆を取ってボールはゴールに吸い込まれました。
後半に入ってからはブライトンペースで、激しいプレッシングでリヴァプールにボールを握らせず攻撃を繰り返します。攻撃に転じられず良いとこ無しだったアーノルドが58分にミルナーと交代になったのは妥当な判断でしょう。
時間の経過と、チアゴやガクポの投入などでリヴァプールもボールを持つようになり盛り返していきます。お互いにフィニッシュまで辿り着ける回数が減っていき、リヴァプールはファウルでブライトンを止めるシーンが増え負傷者も出始め、決着付かず再試合になるかと思われた終盤。ブライトンがセットプレーのチャンスを得ます。
右サイドから左サイドに蹴り込まれたボールをエストゥピニャンが折り返すと、そこに待っていたのは三苫。冷静にアウトサイドでトラップした後、浮いたボールをリフティングしてシュートブロックをかわすと、その流れのまま右足でシュートしてゴール。この時間帯のゴール前で、まるで練習のような冷静さと足技でゴールを奪ってしまいました。
試合はそのまま終了し、ブライトンが逆転勝利。この三苫選手のゴールは散々いろんなメディアで流れてきたので、「あっ!この試合かぁ!」となりました。ゴール単体でもヤバすぎるのにシチュエーションまでドラマチックで、これは無限に擦られるのも納得です笑。リフティングのシュートフェイクとかマンガですよ……。
このゴールだけでも「三苫選手があのゴールを決めた試合です!」と宣伝できそうな試合でした。その上で、ゴール以外でも三苫選手が輝きまくり、三笘選手だけでハイライトが作れそうな勢いでしたね。試合後のカメラがずっと三苫選手を追っていたのも納得しかありません。
繰り返しになりますが、プレミアリーグの面白さと三苫選手の活躍具合を布教するのにこんなに良い試合はそうそう無いと思います。こういった試合をバンバン公開してくれているFAカップは素晴らしいですし、イングランドサッカーのエンタメ力すげぇわと感服しますね。リーグレベル論争なんて不毛なもんがサッカー界にはありますが、新規層を獲得するマーケティングの強さに関してはイングランドがトップだと断言していいでしょうね。
(ちなみに、アマプラではブライトンが日本にやってきてJリーグのクラブと対戦したプレシーズンマッチのアーカイブがあるので、ブライトンが気になった人はそっちも要チェック)
Youtubeでフルマッチを見よう!
自分のYoutubeチャンネルで、今回紹介したようなフルマッチ動画をまとめたプレイリストを作っています。とりあえず良さげな試合のフルマッチ動画はプレイリストに入れておいて、見終わったらリストに残すか残さないか決めて試合を厳選していこうと思っています(なのでリストの内容は日々変わります!)。
リストに残す(ブログで記事を書く)基準は、「結果が分かっていても楽しめるくらい面白い試合」か「サッカーを語る上で知っておかなきゃいけないくらいの歴史的な試合」という感じです。Youtubeでいつでも何度でも見られるからこそ、他の動画や配信アーカイブと比べても特別な視聴体験が出来る試合を集めたいなと。約2時間、映画1本分の時間を使うわけですから、他のコンテンツではなくサッカーじゃないといけない理由を見出だせるような試合を選んで紹介していきたいですね。
関連コンテンツ