
こんばんは、麻乃ヨルダです。気づけば今は2026年、気づけば6月ということで、4年に1度のサッカーワールドカップの時期がやってまいりました。折角のお祭りなので出来る限り多くの試合を見たいと、どの時間帯の試合も頑張ってリアタイ。今日はフランス対スペインの試合を見たので感想を書いていきます。
何もさせず、何も出来ず
モロッコを完膚なきまでに破壊したフランスと、ベルギーを相手に劇的な勝利を勝ち取ったスペインの戦い。立ち上がりはスペインがボールを保持。相変わらず練習のように技術と組織を見せつけるビルドアップで時間を作り、フランスからボールを取り上げます。フランスもスペインのやり方は織り込み済みだと、ミドルゾーンでブロックを構えてカウンターの機会を虎視眈々と狙います。
試合は睨み合いの様相を呈し、お互いに様子見をしながら時間が過ぎていくと19分。左サイドから抜け出したククレジャのクロスが上がると、流れてきたボールをディーニュがどう処理するか一瞬考えたところですかさずヤマルがボールを奪い取りに来て、ディーニュがヤマルを蹴ってしまいPK!このPKを冷静にオヤルサバルが決めてスペインが先制します。
ハイドレーションブレイク明けにサリバが負傷するアクシデントがありラクロワと交代。出鼻を挫かれるフランスはスペインの攻撃をなんとか凌ぎながら速攻を繰り出していきます。シンプルにライン裏をエムバペのランニングで狙っていき、スペインもラインコントロールとウナイ・シモンのカバーリングで紙一重の守備を見せます。
後半のフランスは前半でイエローカードを貰っていたラビオに代えてコネを投入。しかし特に何も起こらないまま10分が経過し、更にバルコラに代えてドゥエを投入。そのすぐ後、フランスを押し込んだ状態でペドロ・ポロがカットインし、斜めパスを受けたダニ・オルモが絶妙なライン裏への落としをして、そのパスを受けたポロが冷静にメニャンとの1対1を制して追加点!オヤルサバルのボールを受けに降りるプレーも光った、お手本のような崩しで試合を決定づけるゴールを手に入れました。
追い込まれたフランスはオリーセとディーニュを下げてシェルキとテオ・エルナンデスを投入。スペインもダニ・オルモとファビアン・ルイスを下げてペドリとミケル・メリーノを投入。これでも流れは結局変わらず、フランスは必死でボールを追いかける選手と既にトーンダウンしてしまっている選手でまとまりがなく、全く反撃の雰囲気が漂わないまま時間だけが過ぎ、結局試合終了。90分を通じてスペインが完全にフランスを支配するだけのゲームになってしまいました。
フランスキラー
フランスはスペインを相手に何も出来ませんでした。個々の能力では間違いなく最強と謳われ、そんなフランスをスペインは止められるのか?という風潮でしたが、蓋を開けてみれば個の力を一切出させてもらえることなく、ひたすらボールを回され続けて終了。まるでサッカーゲームのプレイヤー対CPUを見ているような、一方的なやられっぷりを見せるだけになってしまいました。
スペインは完璧な勝利。特にフランス相手だからといって何かが変わることはなく、いつもどおりにプレーして最強チームを叩き潰してしまいました。戦うというよりも「処理」に感じるほどあまりにも淡々とプレーを消化し、試合のテンションを完全に冷ましてフランスの心を折りました。
あのフランスが手も足も出ず全世界に衝撃を与えたこの試合。ただ、スペインがフランスよりも絶対的に優れていたからというよりは、相性の要素が大きかったようにも思います。
フランスは一人で守れてしまう屈強な守備者たちが相手の攻撃を止め、自由を謳歌する攻撃陣が好き放題にカウンターで暴れるチームですが、スペインはどんなに守られていてもスペースを生み出し穴を作って突けるチームです。引いて守る相手はむしろやりやすく、永久にボールを回して相手を動かしながら試合を支配できます。
エムバペが居る以上、絶対にプレッシングとブロックの強度が落ちるフランスはスペインからボールを取り上げることができず、個々でボールを追いかけてもスペインの選手の優れた駆け引きで簡単に守備を無効化されます。
フィジカル的には最強の個を持つフランスでしたが、1対1のボールスキルという意味ではスペインも圧倒的な個を揃えていて、11人全員が目の前の相手くらい簡単にいなせるスキルと戦術眼を持っているため、フランスは闘牛の如くスペインの選手に踊らされるばかりでボールを奪取できる雰囲気がありませんでした。「個の力vs組織力」といった見方をされがちでしたが、この試合で1対1に勝ち続けていたのはスペインの方でした。
スペインに対して有効なのは、少しでもボールを回す時間を取り上げること。強度の高いプレスとボールを奪った後の保持の時間作り。スペインの方からミスをすることが基本的に無いので、ある程度は真っ向勝負を仕掛けないとただ試合を支配されるだけで終わります。そして、堅い守備ブロックで穴を空けずに、放り込みとミドルシュートしか無いと思わせて焦らし、カウンターを狙う。
フランスはこれらの有効打が全く打てませんでした。今大会でスペインを相手にこれらの手が最も打てていたのはカーボベルデでしょう。恐ろしく統率された守備があり、更にトランジション局面でスペインのプレッシャーを回避してボールを持てていたので、スペインに支配されっぱなしになりませんでした。カーボベルデ戦ではまだヤマルら主力のコンディションが上がっておらず、スペイン側に引いて守る相手を強引にこじ開けるカードが不足していた幸運もありましたが、今大会で唯一スペインに負けなかったのがカーボベルデなのは偶然ではありません。
フランスは直近でのスペインとの対戦成績が悪く、勝ち越されているというのも納得の相性の悪さ。強くて速いやつを11人並べて好きにさせようというのがデシャンフランスなんですが、その屈強な11人が1人ずつ剥がされ2対1を作られていき、攻撃も守備も機能不全に。いくら強力なカードが潤沢に揃っていても個人能力を封じられては意味がなく、逆境でチームをまとめて盛り立てるリーダーもおらず、ここまで暴れてきた若きタレントたちが早々に「ムリムリ」と白旗を上げていたように見えました。
ボール保持の局面でスペインを苦しめられるラビオが早々にイエローカードをもらい、カードトラブルを気にして交代させたこと。個の力で守れるサリバが負傷したこと。メンディーの負傷で出番が回ってきたディーニュがやらかしたことなど、色々うまく行かなかった部分もありましたが、根本的に長所と短所がかち合ってしまうスペイン相手ではこれらのディティールが違っていても勝つのは難しかったのではないかと思います。ライン裏を狙いまくって事故るのをお祈りとか、フランス側が分の悪い賭けを当てまくってようやく五分の戦いになりそうです。
フランスが活路を見出だせる術があったとすれば、エムバペがプレッシングをしまくるとかエムバペを交代させるとか。現実的にそれは無理な話なので、この時点でフランスは打てる手が限られて厳しかったですね。普通の相手であればエムバペ抜きでも守れるし、カウンターに専念させた方が収支が取れるしで問題ないんですが、スペイン相手だとエムバペのデメリットしか出ませんでした。
世界で最もタレントに恵まれる国が、タレントパワーに振り回されて負ける。物語的にはキレイなオチですが、流石にこのオチを試合前から完璧に予想できた人は少なかったと思います。自分もEUROの時に見たフランス対スペインはもっと拮抗した試合だったと記憶していたので、五分の殴り合いになると思っていましたし、少なくともこんなワンサイドゲームになるなんて一切予想できませんでした。
終わった後でならフランスがボロ負けした理由をアレコレと並べられるものの、試合前にこれらの要素を挙げていって「スペインがフランスをボコボコにします」なんて絶対に言えませんでした。実際、ラビオのカードとディーニュのPK献上が無かったらもうちょっとは違う展開にはなっていたような気もしますし、両チームにとんでもないクオリティーの差があったとは思いません。色々な物が噛み合ってしまった結果でしょう。
とにかく言えるのは、個人的にフランスの良い選手を並べるだけのサッカーがあまり好きではないので、フランスをストップできる最有力候補だったスペインがフランスを倒してくれてちょっと嬉しいということです笑。ジルー・グリーズマン・エムバペの3人をマテュイディ・ポグバ・カンテで補佐していた頃の、スペシャリストたちが長所を活かし合う戦い方はすごく好きだったんですが、近年は噛み合わせを気にせず並べてるだけなので、こんなクオリティーの暴力が許されてたまるかよ〜!と思っていたのでスペインが勝ってくれてよかったです。
が、今日の試合のスペインはあまりにも冷徹というか、リスクの高いチャレンジングなプレーを全員が平然と行い続ける、感情が無いサイボーグ軍団のようなプレーをしていて、とんでもなく凄いことをしているのに「で?」と盛り上がる暇も無く流され続けて、これはこれでエンタメを感じられない戦いぶりで怖かったです笑。フランスとは別方向であんまり面白くない、行くところまで行ってしまったスペインサッカーの極地。プレーレベルが上がりすぎて何が盛り上がりどころなのか分からなくなった情熱の国です。
こうなってくると今度は世界がストップスペインに切り替わり、明日対戦するイングランドvsアルゼンチンの勝者がスペインとどういう戦いをしてくれるのかが気になります。ペップバルサの隆盛で世界がポゼッションに染まり、かと思えばフィジカルに回帰し、またスペインが世界を席巻しようかという現在。次の時代の1ページに何が刻まれるのでしょうか。
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